2012年3月16日金曜日

ハノイで考えていたこと

2012年3月9日~12日 ベトナム,ハノイでNGOの国際研究会議に参加していました。

 アジアのNGOが一堂に会してCSO(市民社会会議)として,FAO(国際連合食糧農業機関)への政策提言を議論することが目的です。私はこれに初めて参加したのですが,アジア農村地域での社会問題が包括的に議論されていました。
 主なテーマは,「産業投資による農地の収奪(Investments and Land grabbing)」,「食料と水の安全(Food and Water Security)」,「女性とジェンダー問題について(Women and Gender Concerns)」,「気候変動による農作物への影響(Food Resiliency and Climate Change)」などです。
 私の研究としては,農村から都市への人口移動の問題,農業の近代化にともなう変化について,意見を交換することが目的であったのですが,現実は私の想像をはるかに超えた次元にありました。



産業資本投資と農地収奪
 前回のフィリピンについての記述では,近い将来には農村部での近代化が進むこと,外資系の投資によって農民が土地を追われ,都市部への人口移動が加速するだろう…と書きましたが,事態はすでに始まっていました。
 フィリピンだけではなく,インドネシアでも,「ある朝,突然,農地が外資系企業に占拠されて,農民は知らないうちに土地から排除されている,そんな事態がすでに起こっているのです」との発言が繰り返されていました。これがLand Grabbing 農地の収奪です。
 「小作農民は,農地を追われて都市へと流れる,その都市でも仕事がなければ,別の地域へと流れ流れ,そして,海外の建設現場へも流れていく,まさに浮浪民となっていくのです。」
「そもそもインドネシアやフィリピンの周辺地域では,まだ戸籍もなく,教育などとはまったく無縁であり,少数民族の言語しか話すことはできず,もちろん読み書きはできない。そのような人びとに耕作権を主張することはできず,農地を追われた人びとは『暴徒』となるか,浮浪民となるしかない,これが現実です」との説明を聞くと,返す言葉もありません。

気候変動と食糧確保の問題 
 今回の議論では,分科会にわかれての議論であったため,私は農地収奪問題の舞台しか参加できませんでしたが,他のテーマについては全体会での報告を聞くことができました。
 気候変動による農作物への影響は,国,地域によってまちまちです。ある地域では雨が降らない,干ばつが問題となり,他の地域,たとえばベトナムでは海水位の上昇によって農地が水没する問題がすでに観察され始めているとの報告がありました。集中豪雨による水害,干ばつ,海水面の上昇など,地域によって気象変動の影響は当然異なります。それが具体的にどのくらいの農作物に影響をもたらしているのか,収穫の減少については,この会議の舞台では紹介されませんでした。しかし,モンゴルでは干ばつが問題となり,ベトナムでは海水面の上昇などがすでに確認されていると言います。気象変動については,政策的対応が難しいことは誰にでもわかりますが,NGOは国際金融機関による資金援助によって,当該地域の食糧確保を提言しています。フィリピンやインドネシアでは,米を輸入に依存しているからです。

 「女性の解放」とのテーマについては,今さら?と思ったことですが,途上国の女性がいかに過酷な労働と家事,育児を担い,家庭内での暴力にも耐えているか,そこには「人権」という発想さえもなく,悲惨な実情であるとの報告がありました。日本国内での問題とはレベルがまったく違います。近代社会とはとても思えない実態があるわけです。

          アグリコード(NGO)の代表とアジアドラ(ASIADHRRA)の夕食会

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